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Earth hacksセミナーレポート③_脱炭素の海外トレンドと日本の競争力

脱炭素の海外トレンドと日本の競争力

2023年7月10日に開催された「脱炭素(デカボ)を価値にするマーケティングセミナー」において、一般社団法人サステナブル経営推進機構の鶴田 祥一郎 氏と環境省 地球環境局の金井 大樹 氏がトークセッションを行った。テーマは「脱炭素の海外トレンドと日本の競争力」

「LCA(ライフサイクルアセスメント)」と「CFP(カーボンフットプリント)」とは

脱炭素を語る上で、避けて通れない二つの必須ワードを紹介しておこう。ひとつは「LCA(ライフサイクルアセスメント)」。製品の資源採掘から廃棄リサイクルに至るまでのライフサイクル全体の環境負荷を評価する手法だ。もうひとつが「CFP(カーボンフットプリント)」。「LCA」の手法を使って、製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの量をCO2に換算して可視化した数値のことだ。

まだまだ日本では馴染みが薄い二つのワードだが、欧州では一般的に知られる概念となっている。フランスなどでは、製品へのCFP表示を義務付ける法案が可決され、違反者に禁固刑10年もしくは450万ユーロ(日本円で6億円)の罰金が課されるという厳しい罰則規定まで設けられているほどだ。

“CFP(カーボンフットプリント)”の計算によって、製品の資源採掘から廃棄リサイクルに至るまでのCO2排出量が“見える化”出来るんです。まず「何を対象として、何年使うのか」等の算定条件を考えるのがステップ1。条件に沿って製品のライフサイクルを描くのがステップ2。製品のライフサイクル全体で使われる材料やエネルギーのデータを取るのがステップ3。どれだけのCO2排出量になるのかを計算するのがステップ4。こうした過程を経て計算されるのが『CFP』なんです」(鶴田)

一般社団法人サステナブル経営推進機構 
SX事業部 部長 鶴田 祥一郎 氏
デカボスコア算定の技術支援などLCAを核としたコンサルティングやCO2の見える化を通した消費者コミュニケーションにも取り組む。

生活者の行動変容に重要なのは“ラク”や“トク”

いま多くの企業が「LCA」や「CFP」を使って環境に配慮した製品を作り、生活者の行動変容を促そうと努力している。しかし脱炭素の実現と継続に向けて重要なのは、価格をはじめとする経済性も優先しつつ、環境に良い消費行動が尊ばれる社会を作ることだ。環境省の金井氏は、その理由を次のように語る。

環境政策を推し進める上で欠かせないのは、企業活動の持続との両立です。新しいビジネスモデルを作らないと、経済性と環境性、両方を担保する形はできないと思っています。生活者側の機運を作りながら、それが企業活動に繋がっていくという良いスパイラルを作り上げていくことが重要なんです。消費者の皆さんに環境意識を高めていただいて、脱炭素マーケットが出来上がっていけば、企業の方々のモチベーションに繋がりますよね」(金井)

環境省は、生活者の行動変容を実現するために、民間企業と手を取り合って国民運動を展開している最中だ。環境保護が生活者のメリットにつながる形での訴求を大切にしていると金井氏は語る。

「“新しい形の豊かな暮らしをつくった結果としての脱炭素を目指していきたいです。何かしらのアクションをすると経済的、時間的なメリットが発生するなど、“ラク”や“トク”を感じる打ち出しこそが重要だと考えているんです」(金井)

環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 
脱炭素ライフスタイル推進室 室長補佐 金井 大樹 氏
生活者を取り巻く環境や地方自治体など「暮らしの領域」の脱炭素化を目指して奔走している。

気候変動をはじめとする環境問題を前に、我々は社会への関わり方を大きく変えるべきフェーズに入っている。「脱炭素化」が急務であることは言うまでもない。そのために「LCA」や「CFP」を使ったCO2の見える化は、必要最低限やって行かなければならない社会課題と言えるだろう。とはいえ、お説教のような啓蒙活動のみでは生活者とのコミュニケーションは成り立たない。そこで重要になってくるのが、各製品自身の工夫や努力などの後ろにあるストーリーを伝える形の訴求だ。Earth hacksが提案する「デカボスコア」もまた企業と生活者を結ぶ強力なコミュニケーション・ツールとなっていくはずだ。

『Earth hacksセミナーレポート④_ヤフー、コアレックス信栄、UCCによる脱炭素マーケティング先行事例』へ続く